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の『作家の街』の
第7棟21号室■プリンセス・プラスティック実験室

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ユキさん上がったり下がったり

 結局2週間ほど療養生活のユキさんであるが、病態はまちまち。寝込む日もあればユキマンガの素案に目を通したり『アンニュイゆきちゃん』という即興マンガまで書いてしまうほど元気にもなる。
 生活習慣病は長丁場だし、今の医学の発展と生活習慣病の広がりを見ていると、将来は決して閉ざされたものではないと思う。
 明日はユキさん再び糖尿の病院。今日はそのために早寝である。ちょっと病院が遠いのだ。

立体TVと私の仕事

 昔実験しているのを取材したが、とにかく技術的にもソフト的にも時間と予算をかければいずれ何でもできるというジュール・ヴェルヌの立場だからこそ、それだけの投資を呼び込めるコンテンツをと思う。その点でWiiは振り回すリモコンとマリオときて、Windowsに限らず平面への立体オブジェクトの変換をやった。そこでPS3ガンダムもあるし、立体処理だからヲタどもは食いついてどうせウハウハ、と思ったのかも知れないが、大事なのはそのコンテンツという概念。
 見栄えをいくらよくしても、結局はアニメーションという動きがないと人はついてこない。そして、動きもただ動いているだけでは駄目で、最終的にはストーリーと言うことになる。
 そう見越してプリンセス・プラスティックを書き始めて20年。かなり現状のアニメなどで表現されるエフェクトは予期してきたものと似てきた。でも、プリンセス・プラスティックが決定的に違うのは、銃器やメカではなく、それに携わる人々であり、命であり、心であり、そのすべてを扱う運命なのだ。
 そのため、私が一番書きたかったストーリーがプリンセス・プラスティック・プライマリープラネットだった。今ウェブ公開しているけど、歳を経る毎にもっと重厚にできないかと考えるようになっている。
 もう発表してしまったもので、決して内容的に劣っているとは思わない。だが、芸事の常で、どんなに頑張っても、過去の自分は現在の自分の立場だとぬるいのである。でも、それは過去の自分が手抜きをしたわけではない。それだけ現在の自分が技量と、審美眼が育ってしまったということなのだ。
 そういう面で、プリンセス・プラスティック計画という、始まりは現在『道真異聞』から始まり、『スーパー防空巡洋艦・綾瀬』に至り、そこから『蒼空燃ゆ』でさらに作品世界を拡張すべくやって、そして『エスコート・エンジェル』『ナウト・ナウト(旧講談社版プリンセス・プラスティック)』、そして『プライマリープラネット』となり、『ドロップ・ディメンジョン』で作品全体の宇宙像が確定し、そのうえで『シルエット・シルバー』となった。どの作品も手抜きはなかった。
 悔しいことも悲しいこともあったけど、でもそのすべてで、私は一つの世界観、時空管理機構が誕生して0秒標識を宇宙の始まりに設置しようとしたこととか、時空管理機構の管理外のタイムトラベルを使おうとした犯罪者たちとかを書いてきた。
 その中で、私は収入と仕事のどちらかを選ぶように迫られた。仕事をしている人なら誰でもその心髄の瞬間に思うだろう。自分は収入のために仕事をしているのか、仕事のために仕事をしているのか。
 私はそこで決断してしまった。仕事を選んだ。おかげさまでそれは少なくない支持をいただき、こうして生活している。もちろん趣味としてやっているよねでん線もじつは裏設定があってプリンセス・プラスティックなのだが、そういう路線拡大のために、さらなる拡張を考えている。
 べつにこれは今、仕事と収入をバランスさせている人々を非難している訳じゃない。仕事人なら、仕事と収入をバランスさせるし、そこに口惜しさを感じることもあり、逆に喜びもあるはず。それは結局程度の問題なのだ。
 だが、私は仕事、それも一生の仕事と見込んで仕事を始めた。その取材費のためにいろいろなバイトをした。続けているのもある。これから始めようというのもある。
 今でも信じている。私のしている仕事は、私が消滅した時に評価されるものでも構わない。その間ユキさんと幸せに暮らせればそれ以上は求めない。ユキさんとは日々楽しく暮らせている。それはユキさんがインスリンを初めても変わらない。私はユキさんを尊敬しているし、ユキさんも私を理解してくれている。その周りの人々も理解してくれている。
 プリンセス・プラスティックは大きな仕事である。今特に2足歩行をたとえばパワーアシスト技術の発展からその装備化、そして大型化の歴史をなんとかオリジナリティあるように作りたいし(そこでキーとなるのはDAGEXとKey Of Goldだと思う)、そしてOSでいえば、HyperRoomsというアナザーリアリティOSへの道筋にあたるジェネレーターの技術(これはipからipv6になりipvxになりexipになり、そこからexzipになり、最終的にはNexzipになる)、磁気刺激と磁場変化を両方使うインターフェースデバイス両用脳磁計になり、そのなかで人間の生命を突き詰めることにもなる。
 本当に大きな仕事である。私一人でどこまでやれるか分からない。だが、こうして途中成果を発表できているのは救いである。両用脳磁計の研究の中で人間は全ての存在に割り当てられたコード、Nexzip座標系に気付く。その座標は命ソノモノも座標化し、さらにその座標をまとめて可能性宇宙も座標化していく。その全ての座標を発行し、回収し、割り当てるのがアメノミナカというタイムパラドックス防止用の究極のシステムであり、そしてそれは宗教で言う世界樹であり、そしてそれはいまスピリチュアルなんて呼ばれているが、本当の意味の魂の循環に関わる。
 何度か私はこの全体図を考えている。そして、その全体図に近づけるように、部分図である作品を書いている。エロスな話であるホワイト・ホリゾントにはその過程でNexzipが人間に使えるかどうかと言うところで苦しい決断をした人間と、プリンセス・プラスティックにそれを受け継いでいくある女性の姿がある。エースアクティブにも、NexzipやHyperRoomsやジェネレーターに関わるワークアーツというベンチャー企業が関わっている。どんな小さな話にも、根底にはこの全体図がある。
 部分が全体を表し、全体が部分を表す。それこそが私の理想であり、一生の仕事なのだ。そして、それが今こうして部分的にもできている。幸いにもそれをもうしばらく続けられそうになっている。


 焦る気持ちはある。時折、焦って身をよじらせて苦しむこともある。
 でも、誰にもこのアメノミナカの全体図は、書けない。
 私にも書けない。
 なにしろ、それは人知の究極の姿なのだ。
 じゃあ、書けるところだけ書けば良い。そっちのほうが慎ましいというかも知れない。
 でも、それだったら、『帝都物語』という大先輩がある。

帝都物語〈第壱番〉 (角川文庫)

帝都物語〈第壱番〉 (角川文庫)

帝都物語〈第弐番〉 (角川文庫)

帝都物語〈第弐番〉 (角川文庫)

帝都物語〈第参番〉 (角川文庫)

帝都物語〈第参番〉 (角川文庫)

帝都物語 第四番 (4) (角川文庫)

帝都物語 第四番 (4) (角川文庫)

帝都物語 第伍番 (5) (角川文庫)

帝都物語 第伍番 (5) (角川文庫)

帝都物語 第六番 (6) (角川文庫)

帝都物語 第六番 (6) (角川文庫)

 私がプリンセス・プラスティックを書こうと思ったのは、小学校高学年の頃、『帝都物語』を1巻から順々に買って読んで、『未来宮編』を読んだ時、私は何とかしてプリンセス・プラスティックを書こうと思った。帝都物語とは全く違う世界観ではあるが、私の中にはすでにそれがあった。
 そして、書き始めたのは中学3年だった。そこからずいぶん遠回りもした。
 途中、エンターテイメントとしてその全体図を部分図で描く手法を思いつき、初めて描いた小説が『エスコート・エンジェル』だった。
 はっきり言って、人生初めて終わりまで描いた小説が『エスコート・エンジェル』だった。
 何という僥倖だろう。それが出版され、お金までもらってしまった。
 その分、苦しいこともあった。
 でも、私はこのアメノミナカシステムが危機に瀕したり、それを回避しようと人々が立ち上がったりする上で動いている歴史の、そのなかで起きている危機とその回避を考える人々、と入れ子になった世界を書こうと思っている。
 その点で、評価の別れる『蒼空』だが、実はこれが評価が別れたのは当然だと思う。でも、これがここから大きく展開して未来図であるプリンセス・プラスティックにつながっていく礎石なのだから、完成図を見せなくてはならない小説としては難があっても、発表できたことは意義深いと思っている。
 というか、いまそういう境地に久しぶりになった。


 現実は厳しい。
 何度か、絶望した。
 これからも絶望するだろう。
 でも、私の仕事は、小説家というよりも、プリンセス・プラスティックそのものなんだと思います。今は。