急行〈八甲田〉の銀色男と浪人生

 父が大湊勤務の時に、単身赴任見舞いで乗りました。
 当時は青い14系座席車の夜行。上野発の夜行列車。
 最後尾から続く禁煙・喫煙とも指定席はぎゅうぎゅう。
 喫煙指定車はデッキからのドアから反対側のデッキのドアが見えないほどの紫煙もうもう。
 で、母と禁煙指定席に乗ったけど、指定席が余りにも窮屈なので、先頭の機関車側の自由席車のほうが空いていないかと移動。
 すると、途中の車両(4号車だったっけ)で、一目見るだけでヤヴァい人がなにか銀色に光るものを振り回してこっちを威嚇していた。
 私も当時逝っていたので、『なんかめんどうだなあ』とその人をやり過ごして通路を通過。男はボックスシートのところで騒いでいるが、私はスルー。最接近距離1メートル程度。刺される可能性は十分にあったけど、私はそのとき、そんなことがどうでも良かったらしい。
 機関車の後ろのデッキまで行った。
 戻ってくる時も未だその銀色振り回し男は暴れていた。
 でも、私はまた何も考えずにその車輌のその男の脇を通り、母の待つ指定席車に。
 あとでまた移動すると、なんだか鉄警隊が乗って、男を取り押さえたらしく、その車輌は緑のシートに血が飛び散った状態をスズランテープで封鎖し、使用禁止になっていた。
 なんで自分が平気だったんだろう。
 明らかに刃物振り回していたのに。

 その数年後、私は精神科に入院しました。
 今は退院して、通院精神療法を受けています。

 なぞである。いや、昔の自分の写真を見ると、やっぱりどっか逝っているんだわ。毎日片道12キロの通学路を自転車通学、その上昼食費は昼食を我慢して鉄道模型に。オカシイ生活だったなあ。