増圧ブレーキの死角


Yahoo!ニュース - 読売新聞 - 常磐線事故、ブレーキ不備が一因…事故調改善求める
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060906-00000202-yom-soci


 事故調が機能しているなとかえって安心した。在来線は点検の委託など安全確保に疑問な事もあったが、高速在来線の増圧ブレーキが非常ブレーキで効かないのは、考えてみればそうだったなと思う。
 電車の場合、ブレーキは、ブレーキをかけた状態になるスプリングをゆるめるためのピストンを動かす圧搾空気の圧力で制御している。
 圧力があがればブレーキが解除され、圧力が抜ければブレーキが自動的にかかる。ブレーキ空気配管に漏れがあればブレーキがかかるのだ。列車がダメージを受けたり、車両が分離してしまったことを検出して非常ブレーキをかける意味もあってそうしている。時々ある車両故障では空気配管のトラブルでブレーキが緩まない、『ブレーキ不緩解』になり、自走不能になったケースが少なくない。
 で、非常ブレーキはそのブレーキ管圧力をすべて抜いてしまう。原理上は一番ブレーキの圧力がかかるはずだ。
 だが、在来線の高速化が求められ、それでも法令上600メートル以内に停車できるようにブレーキの改良が求められ、そこで増圧ブレーキが作られた。
 JR化近辺で開発されたその増圧ブレーキは、ブレーキ管圧力でのブレーキ制御に遅れがないように電気指令ブレーキを改良したもので、空気圧と平行して電気的にブレーキの強さを各車両に伝える。増圧ブレーキはその制御システムに高速走行時のブレーキではブレーキ圧力を増す指令を加えるものだ。
 だが、今回問題の非常ブレーキは、空気圧を抜くだけであって、増圧指令は行われない。電気指令とも別なのでブレーキ動作に若干の遅れがある。
 別系統のブレーキとすることで安全性を確保するはずなのだが、それが裏目に出たようだ。
 そういやそうだよなあ。頭のいい人たちが鉄道総研には一杯いるはずなのに、気づかなかったんだなあ。まさに死角だな。