悲しき商売

 大塚英志『キャラクター小説の作り方』についてあれこれ言おうと思った。
 けど、最近当人『物語消滅論』を書いているじゃん。

 そうだよ。キャラクター小説を既存の日本文学論の続きにするのは甘いと思っていたけれど、それがわかったのかな。
 基本的に今の世代、読んでませんから。
 書く方が好きな人たちっているし(私もそうだ)、読むっていったって世の中、物語の洪水だもの。
 だから、脱構築する方法と、再構築の動機とか、そんなことのほうが語りやすいと思うのに。
 むしろ記号論の文脈で言うと、モエとか理解出来るんだけどなあ。
 読む方が黙っている時代じゃないんだもの。
 みんな選択的に読んでるんだからさ。
 もう昔の話をしても仕方がないよ。
 遙か昔、『あれ読んだ?』『読んだ』『おれもおれも』みたいなコミュニティが学校とかで繰り広げられるような一般教養の世界なんてもう存在しない。
 あるのはバカ丸出しであってもとりあえず言ってみるという言葉の大インフレ時代。
 まあ、それで私もその一翼なんだなあと思いつつ、しかし沈黙はしないわけです。
 嘆いても始まらないし、嘆いたところで現状は変わらない。
 作家は描いてナンボでしょ。

 理屈を云々するのもいいけど、描かないと。

 悲しいこともある。
 小説の書き方を教える、とある小説家のページに、自費出版の会社へのアフィリエイト付きリンクが張られるようになった。
 いや、誰が何をしようと自由だけど、でも小説の書き方を教えて自分は儲け、、自費出版させて会社を儲けさせというのは、なんか描きたいという欲求を食い物にしている気がする。
 描きたければウェブだってあるんだし、ブログのトラックバックなんかは一定の可能性を秘めているし、それにウェブテクストの中には本当に立派なモノもある。
 でも、描きたいという人に寄って集ってああ書けこう書けと言い、お金を出したら出版させてあげると言い、その上本が売れないのを描きたい人の責任にしてしまうのは、私としては少なくとも私の良心が苛まれる。
 まあ、今一番儲かっている出版社は自費出版の出版社だし、一時期描くことを財テクとか有利な副業みたいに言っていた人たちもいたし、その反動か。

 もっと悲しいのが、インターネット自費出版という商売もあったな。iswebなんか、FTPツールすら無しで自分の文章を公開出来るのに。

 なんだか、悲しいというか、ちょっとウツになります。
 私自身、賞も取っていないし、ベストセラーと言えるほどには売れていないし(恥ずかしくない程度には売れているんですが)。

 エライ人たちのすることって、わからない。