偽悪の限界

 なんだか偽悪ぶって姉歯ヒューザーの物件への公的資金投入について『公的資金を投入するな』という人がいる。『自助努力を』と言う。
 まあさ、今日寝る屋根がない完全なホームレス状態の上に娘息子奥さんもその状態にさらすとなった時、できうることは何でもしようと言うのが亭主だろうと思うけど。
 もちろん詐欺の豊田商事事件のような民間の弁護士が民事で争うのが本筋だけどさ、民間には限界があるし、第一、建築確認を民間に委託したという制度自身についてだって疑問が出ているし、それに民対民だから民事でやれと言うのも、じゃあ民間の自家用車同士の事故で死人が出てもアメホなりなんなりを呼んで民事で解決し、警察には通報するな、そう言っているのと同じなんじゃないかな。それにこの姉歯ヒューザーにだって刑事責任を問う段階に来ているんだからさ。
 火事でも、昔どこかのバカが三菱長崎造船所の建造中の客船の火事を消防に長い間通報しなかった事について、所内の自営消防があるから通報しなくて良いんだウンヌンとバカなことを抜かしていた。
 あのなあ、消防法ぐらい読んでおいてくれよ。

 消防法第24条 火災を発見した者は、遅滞なくこれを消防署又は市町村長の指定した場所に通報しなければならない。
2 すべての人は、前項の通報が最も迅速に到達するように協力しなければならない。

 まあ、自分で家族を守ろうと精一杯やって、その結果『スカ』が出た人は、もう『助けてください、助けてください!』と言うしかないだろうに。
 それを『乞食めいている』というのは『安全地帯』からの物言いだろうな。苦しんでいる彼らを乞食みたいな見苦しさみたいに言っているけど、彼らをそうやって本当に乞食に追い込むのか? 疑問。
 それに不動産の買い物って、私、やった経験上、こりゃいくら制度を整えようとしても、罠を仕掛けることはいくらでもできるなと思ったもの。こっちの買い主の不動産屋さんも売り主の不動産屋さんも誠実に応対してくれて、私の浅知恵な質問にもきちんと答えてくれたけれど、やっぱりほとんどの人の一生の複雑な買い物について、こういうトリックをやられて全部民事でやれと言うのは酷ではないか。
 特にこういう難しい買い物については、専門家に委ねるしかないのが一般人だし、どう勉強したってそういうプロにアマチュアが勝てるわけがない。だからプロに頼んで対抗してもらうんじゃないか。
 民事で訴えると言ったって、損害賠償額に応じて訴状にとんでもない額の印紙が必要になる。弁護士も雇わなくてはいけない。その上で公判が始まれば、平日に度々裁判所に行くことになり、その上相手が金を積んで対抗してくれば3審制で繰り返さなければならない。これを被害者が日頃の仕事の合間にやるのがどれほど過酷か。つか、あんた裁判したことないだろ。
 まあ、だいたいに置いて、すぐ裁判だとか言うやつに限って、法律も知らず、裁判に掛かるコストも知らず、小学生的な知識で言い立てるんだけど。何で世の中のトラブルが調停とか和解とかになるのか、その仕組みも分かってないんだよな。
 それにしても偽悪も過ぎると本当に見苦しい。というか、相手の気持ちを理解しようとせずにコメントするのがいかに無責任で相手を傷つけるか、すこし考えたらどうだろう。結局自分の価値観を押しつけて、相手がどういう現実の運命になるかを考えず、ただ自分の暇つぶしのスペースで自分の価値観に酔う。これでは相手はたまったものではない。
 まあ、ウェブなんてそんなもんなんだろうけどなあ。