箱根ラリック美術館見学

 ラリック美術館はラリックが装飾を担当したプルマンカー「Cote d'Azur」が保存されていて、実際に中に乗って紅茶・コーヒーとケーキなどを食べられるというサービスが目当て。
 場所は仙石原。遠いけれど、途中で離合する箱根登山鉄道を見ながら強羅を過ぎて仙石原。


 途中、紅葉を愛でる。青塗装の箱根登山電車も見えたが、移動中なので追い切れず。

 沢があった。
 

 美術館は平日昼間なのに人の入りは悪くない。
 http://www.museum.or.jp/cgi-bin/notice/c-board.cgi?cmd=one;no=333;id=
 プルマンカーの見学は完全当日予約制。14:00からの見学にぴったりの時間で、待ち時間ほとんど無しで開始。
 案内の係の人が格好良い衣装だった。
 展示コースの開始も、展示予約券に入鋏するという凝りよう。鋏が少し減っていたのかシャープな入鋏痕ではなかったが、まあ良いと思う。
 はじめは御殿場側のコーナーで映像資料を見学。
 その後に「Cote d'Azur」の下を回って湯本方の連結部から乗車するのだが、つい鉄道マニアの性、車両の足周りに注目してしまう。
 フジテレビ開局30周年のときにこの列車は日本に航送されてきて、日本の線路上を走ったのだが、そのときは確か日本軌間の台車を履いたはずだが、どうだったのか。
 係の人に声をかけられてお話しすると、どうやら台車も標準軌になっているらしい。台車のイコライザが白くペイントされているのがおしゃれで、小さな頃ずいぶんあこがれ手いたことなどを話す。小さな頃はあのイコライザの曲線がかけなかったんだよなあ。今だったら描けるよなあ。
 イコライザの具合を見ると、やっぱり標準軌用の原型台車のような。

 足周りもできるだけ忠実にということでレールも敷かれ、台車も履いていた。海老名で保存されているSE車もこういう展示にできれば格好良いだろうな。完全屋内展示、しかも空調も完備。すばらしい。
 SE車も空調の利いた博物館に展示して、5両のうち2両で良いから往年の走る喫茶室の復活をと思ってしまう。
 プルマンカーの車内にはいる。車内は明るい。車内は4人個室と2+1シート*4列の開放車室と、2+1*6列の開放車室、そして4人個室の構成で、御殿場側にはサービスコーナーがあって、それは目隠しされている。
 私が座ったのは2+1*2の小さい方の開放室。ラリックの飾りはガラスでできていて、裏側に水銀が流された鏡面仕上げ。車窓の光を反射して複雑に輝く。
 それが国賓・各国首脳級の利用を想定しての車両だけあって椅子に座った感じから違う。鉄道車両とは思えない。深くもなく、浅くもなく、はねるわけでもなく、沈むわけでもなく、硬くもなく柔らかくもなく。この次元に達する車両は日本にあるだろうか。夢空間(24系25形900台)はこれぐらいなっているのかなと思うけれど、私の記憶は展示されていた横浜博が最後で以降乗車体験もないし、横浜博でも椅子はカバーされていて座れなかったような。
 コーヒーか紅茶、焼ケーキを喫食できる。バラのジャムとホイップクリーム、そしてシナモンパウダー付属。バラのジャムの風味がすばらしかった。
 ラリック美術館の冬の展示では最終回が日没後になり夜行列車の気分でかなり盛り上がるらしい。
 天井の電燈は小さなスズランかチューリップの形をしたガラス製のカバーで覆われている。車両を納めた展示室が純白なのでレフ板効果が効いていたのか、ずいぶん明るかった。あと、テーブルランプ。これは元々の職人さんを捜して復刻したという。
 足周りを見て気付いたのだが、車端ダンパーはあっても今の列車のような空気バネではない板バネと板バネの組み合わせ、しかも減衰ダンパもなく、ボルスタ付きイコライザ付きでこれで高速運転するのはきついなと思ったら、やっぱりかなり揺れていたらしい。映像資料でも揺れている。
 そのためランプシェードは倒れぬよう重く作ってあるという。
 アガサ・クリスティーオリエント急行殺人事件はじつは恥ずかしいことに機会を逸して未見だったのだが、それにもこの「Cote d'Azur」が登場しているという。
 ラリックは娘さんも工芸家で、個室の一つが娘さんの作品で飾られているという。作風の違いも面白い。
 美術史知識を最近強化しようとしていたのだが、なかなか身が入らず困っていた。とりあえずミュージアムブックを買ったので勉強しよう。
 しかし、オリエント急行殺人事件は見ていないんですけどね、シベリア超特急は見たことあるんですけど、というギャグが決まらなかったのが悔しかった。
 
 ラリックの作品を見る。大量生産にいたる寸前と、大量生産の合間の時代なので、なかなか見ていて製品としての完成度と作品としてのキレが感じられ、興味深い。特に何気ないエレベーターのドアかと思ったら作品だったりするので気が抜けない。

 で、ミュージアムショップ。
 ものすごい値段。うひゃあ。
 結局ミュージアムブックとポストカードに落ち着く。