不定期連載ウェブ小説・おませさん 第1話

 
 私は三鷹アユミ。小学4年生です。
 今日もいつもの朝が始まります。
「お母さん、買ってよー」
 兄の中学2年生、タカシがお母さんにねだっています。
「DVDプレイヤーほしいよ」
 お母さんは朝ご飯の支度をしながらたしなめます。
「だって、居間で見ればいいじゃない。居間にプレステ2あるでしょ。居間にこの前新調したテレビあるじゃない」
「そうじゃなくて、部屋で見たいから」
「部屋で? なんで? 何を?」
 兄は絶句しています。
 これは部屋の中でえっちなDVDをこっそり見ようと言う魂胆なんだろうな。
 私はそう思います。
 そしてこうやって第2次性徴期となり、場合によっては反抗期につながっていくのだな。
 兄よ。
 がんばれ。
 私は納豆ゴハンを食べるのを一時止め、ふふふと笑います。
「おーう、今日帰り遅くなるから」
 お父さんが入ってきます。
「またサービス残業?」
「まあな」
「でも給与にならない残業を何でこんなにするの」
「そりゃみんなと一緒に働いているんだもの」
 おおっとー! お父さんも追い込まれています。
 私はお父さんがキャバレーの名刺を廊下に落として置いたのを見つけ、拾って隠しました。
 お父さんはなくしたことで動揺していました。
 お父さんも。
 がんばれ。
 ふふふ。
 
 学校に登校します。
 教室には子供たちがそろっています。
「あゆみ」
 呼んできたのは同級生の中野小太郎君です。
「なあに?」
「今度映画見に行こう」
 どきっとします。
 えええ!
 これって、デートのお誘い?
「でも、何を見るの?」
エヴァンゲリオンだよ」

 私はうろたえました。
 私は他人観察が楽しいけれど、自分に向けられると動揺してしまいます。
 どうしよう。
 
 <続く>