深刻な断絶

 いろいろとなんだかな、と思うことがあります。
 いわゆるラノベ調という一群の作品について。
 私もラノベの末席と認識されてかまわないんだけど、ただ、なんだかこの群れって、萌えとかキャラとかの強化について、ちょっと目的と手段を取り違えている気がうすらぼんやりとしている。
 もちろん大塚英志ラノベの書き方なんてのは書き方本の体裁をしながら命がけでこうしてラノベを書いている連中を日本近代文学の文脈で見ておちょくった本なのだが、その後にようやく我々の世代とその前の世代、今40近い歳の人と、まだ20代の人間の間にある深刻な断絶に気づき始めている。
 この両者を分けるのは、書籍業界のバブルの前後かもしれない。
 書籍にもバブルがあったんです。架空戦記バブルだけじゃなく、医者と大学のセンセ関係に何かとエッセイを書かせたがったりしていた時期があったんです。
 今思えばそれこそウロボロスで、書いている人と読む人が交代交代にしかならない、純粋な意味での読者のいない思想雑誌が一時期うじゃうじゃとありましたし。
 今はというと、自費出版で書き手をおだてて金を取る会社も有れば、アメリカなんかではサイゾーで読んだらデビュー作執筆中から書き手をプロデュースして、その実デビュー作ですらゴーストライターが束になって掛かっている、で、その書き手自身、実際は文盲で文章なんか書いたことがない、みたいな読み手をバカにしているとしか思えない事情があるらしい。
 まあ、日本もいずれそうなるんじゃないかなあ。この前のアレだってかなり無理してたし。
 バブルからバブルへ。
 本当なら、私も恥ずかしながら7年やってきたけど、いろいろ付き合った編集さんで、本当にすごいな、考えているな、さすがだなと言う人から、仕事してないジャン、とか、作家をいじめて憂さ晴らしてる単なるパワーハラスメントのサラリーマンじゃん、の人までいろいろな人がいた。
 世の中いろいろなんだけど、夢を描いて夢を作り夢を売る商売だけに、その夢の味にいろいろなものが寄ってきてしまう。私もその一人だとは思っているし、慢心せず、修業を続けなきゃなあと思う。