父のラストフライト
父のラストフライトを見た。P-3Cの38号機の対潜戦訓練が父の最後の飛行だった。
最後まで訓練教官としての飛行だった。
セレモニーに行くと、そのときはすでに訓練ほぼ終了、タッチアンドゴーをやっていた。
ちなみに1Pという機長のままでラストフライトを迎える例はごくわずかであるらしい。これからは多くなるかもしれないらしいが。
普通は地上配置で定年を迎えるが、父は運用班長のまま、P-3C戦術を仕込んだ後輩たちに囲まれてラストフライトだった。
母は和服で花束を渡した。ごくあっさりしたセレモニーだった。
機を降りて、並ぶ全隊員のなか、その列の一番左にいる隊司令に「異状無し」と報告して、敬礼を各隊員と交わし、その後に38号機をバックに記念撮影で終わった。
自衛隊の実用主義は分かっていたはずだけど、でも本当に実用主義だった。
儀礼めいた仰々しさはなかったけど、それでも組織の気持ちのこもったセレモニーだった。
これから隊内の事情はわかりにくくなるだろうけど、自衛隊の基本的な考え方は描いていけると思う。
父のラストフライトで、母もユキさんも泣いていた。
私だけ、泣けなかった。
父が心配だった。
でも、今日、分かった。
私には余裕がない。
仕事で上手くいかないことが多すぎる。
今日、思い返して泣いた。
なんて情けない息子だったんだろうと。
2浪までして大学に入れなくて。
小説描きになりたいと言っても、実質収入がくるまでずっと喰わせてもらって。
情けない。
12冊出した小説描きになったけれど、未だに情けない。
退職する父の心配をする余裕すらない情けない息子。
泣いた。
ごめん、お父さん。
泣いてばかりもいられない。
新作を考える。要望で時空管理機構に話を持っていきすぎという事で、答えとして時空管理機構の話を書くこととする。泣ける話になりそうで、今から楽しみ。素組は終わった。明日当たりから着工予定。