堀江助教授の、総回診です。

 ホリエモンについて。まず売り抜け疑惑。株については実際に売り買いしたことはないけれど、一般常識から文脈を探ってみる。

 まず800億のCB発行で売り抜けはないでしょう。本人が言うとおり、命がけです。転換社債ライブドア株にできない状態になれば、ホリエモン首つるしかないよ。むしろ売り抜けを画策してるのはそのCBを引き受けた外資の証券会社でしょ。800億は早々簡単には普通の会社では売り抜けないですよ。
 だって、800億、はいと出せる人がどれぐらいいるか。いなけりゃ地道に売るしかないけどそれは売り抜けではない。市場の株価低下のほうが速くなってしまう。

 そこで証券会社としてはホリエモンが首をつろうがどっちにせよ儲かるというのがが株屋の話です。
 ホリエモンも黙ってライブドア地味に広げていけば良かったのに、同じビルの証券会社にそそのかされてやっちゃったんじゃないかなあ。

 つか、ホリエモンこういう大仕掛けをするのにテレビ出過ぎ。ということで、ホリエモンは首つる寸前で破産して芸人として転身するしかないと思うなあ。経営判断として見ていて無理がありすぎる。やっぱライブドアのチメイド(謎のフォークデュオ)アップと思わされてやっちゃって、引っ込みつかないんじゃないかな。調べてみるととんでもない利益をライブドアが上げないとやっぱり首つりしかないんですよ。
 
 右が儲かって左が損すればその儲けと損のピーク幅で利益が出るのが株屋とかファンドなんだから、証券会社としてはホリエモンが首をつろうとライブドアがつぶれようと全然かまわない。市場が騒ぎで活況になればそれでウマーなんだから、ホリエモン踊らす側だったのに踊る側になっちゃったなあという感じ。テレビものこのこ出すぎだし。

 詰めが甘いよ。本気でクーデターやるんだったらもっと黙ってなきゃ。まあ、本人もライブドアのチメイド上げにもなると思ったのかも知れないけど、株屋とかは上手いこといって軒先で副収入のビジネスしましょうと入って母屋を奪う手口なんだから。と言いつつ、まるで拙著『抜き身の刃』(Web販売中)の企業内クーデターを思っちゃったよ。結構男としては燃えるんだけどね、こういうキワキワの経営って。
 でも、それは3流の会社がやること。今思うとそこら辺の詰めの甘さを透かし見られて楽天に負けた気がするなあ。

 私も野望というか財前助教授感覚になることはある。とくに推協を見ているとそう思う。事務所経費で3人も事務員がいるのは仕方がないとしてもコピーのリース代年6万。今時コピー機リースで借りてどうするんだよ。ブラザーの複合機で十分だろ。毎年3台買えるよ。そのコピー機を会報の印刷に使っているならまだしも、会報は会報で年120万近く払ってオフセット印刷している。で、載ってるのはエライ先輩作家のお話だけ。まあありがたく伺いますけど、でも東京で球場かりて編集者と作家の対抗ソフトボール大会とかも会費からでているんだよなあ。推協の年会費24000円払っても地方の作家は参加できんだろうに。

 まあ所属していると『自称小説家』の『自称』は取れるかも知れないけど、それに24000円。しかも会員を増やすと派閥ができて、というのは次第に某ヤバイ系統の金儲けに近くないか。特に余ったから同好会をやってと某推協会計の先生が仰る。同好会を立てると同好会費を出してくれるらしい。推協で鐵研でも作るか。いやそんな暇はないけどさ。

 そういう状況を見ていると、やっぱり乗っ取りは男のロマンですよ。銀行(立てこもり犯)にしろ飛行機(ハイジャック)にしろ国(クーデター)にしろ大学(白い巨塔)にしろイージス艦亡国のイージス)にしろ原子力潜水艦沈黙の艦隊)にしろ、何かを乗っ取ってみたいと思うのは男なら誰でもある欲望だと思うんだけどなー。

 権力を一挙に奪っちゃうカタルシスというのはぜったいにありますよ。そのあと支配するというのはメンドイなーと思うかも知れないけど、でもその軸とは別に忠臣蔵的な復讐劇もあるだろうし。まあ成り上がりストーリーの変形ですね。本宮ひろ志にせよ課長島耕作にせよあの種の立志伝は燃えるからなあ。

 でも島耕作、取締役から常務になっちゃった。このまま社長、会長といってそこから国会出馬して議員島耕作、大臣島耕作、総理島耕作に最終的には天皇島耕作になろうとするのかな(バカ)。
 
 だいたいホリエモンは金目当てだったらもうちょっと頭良くできるでしょ。それができているからライブドアみたいなヤフーだの楽天だのの同類項の企業を買収もされずにここまで経営できてきたんだと思う。こんな大勝負しなくても稼げるでしょう。

 どちらかというと金儲けと言うにはあまりにもショボい手。だから、結局どちらかというとこっそり詰め将棋して形勢を固めていきなり球団2つ一挙にゲット、これで楽天を抜けると証券会社にそそのかされ、それで買ったけどその第一撃のパールハーバー時間外取引で完全にとどめを刺せないまま記者会見になってそして段々はじめの乗っ取り計画がマギレて知名度アップ作戦と言うにも中途半端、売り抜けにも中途半端という、ミッドウェイからガダルカナル泥沼消耗戦、そして沖縄全滅戦ルートだと思うけど。

 でも、こう言うときこそ一般のデイトレードごっこしている一般投資家が稼げるときでしょう。知り合いで三菱自動車が悲惨だった頃に買いたたいて値を戻したときに売って100万儲けたのがいたな。市場は話題性もないと活性化せんのでホリエモン乗せられちゃったねと言う感じ。
 
 だから、あとは借金芸人、800億円借金ありますで売っていくしかないんじゃないかなあ。とうていここから逆転技があるとは思えない。初っぱなの時間外取引の間に決着を付けられなかった時点で負けでしょう。
 だけど証券会社は先物取引の会社と同じで『いま手を引くと損をする』と言ってズルズル金をださせて全部吐き出させたらポイでしょう。だから、借金芸人としては千昌夫よりもスケールがデカイと売っていくしかないんじゃないかなー。
 天皇島耕作だけど、皇室典範改正で女帝になったらあり得るよね、尊称忘れちゃったけど女帝の旦那としての。

 夜、ホリエモンテレ東出演。ウルトラCではないと言う彼の戦略がテレビで見えてしまった。バカかコイツは。もう手の内ばれちゃったよ。TVに出られるというので浮かれすぎ。つまり、ニッポン放送株を増資するなりフジTV株を外資に違法にならない程度に喰わせて議決権のない株で相手を押し込めて残りの議決権の残った有効な株で勝負するとか、商法ビギナーの私でもある程度分かってしまう手だ。
 
 確かに手詰まりではない。だが、しかしそれをいじっている時間どうすんの。労力の見積もりできているのかな。それにせっかくそういうアイディアがあるのなら、TVになんか出ないできっちり詰めてからオープンにした方が良いのに。確かに方法があるけど、これは守る側も防御するよ。そうなっていくとどんどん証券会社は儲かるけどライブドアは苦しくなっていくでしょ。

 ホリエモンはラジオ局でやりたいことがあるだろう。ホリエモンはラジオ局に興味がないとしても、ライブドアには興味のある連中がごろごろいるよ。少なくとも売り抜けなんてショボイ金儲けはやっぱりしないだろう。で、手もある。だが、ホリエモンはどこまで計算に入れているか分からないけど、長期戦になれば着実にライブドアは苦しくなっていく。既に残弾が心細くなって、金の切れ目が縁の切れ目、金がないのは首がないのと同じなのに当人はTV出演で浮かれているけど、その実株屋しか儲からないよ。

 だってフジだって抜け穴的にライブドアの買収に対抗するために増資できるような気がする。そうすると味方に回ってくれるはずの外資がこりゃシーソーで面白いぞとわらわらと集まって煽って双方に金を貸すよ。そこでどっちが転けようと美味しいようにするのが金融の基本だし、それの前線はまさしく泥沼戦だよ。ガダルカナルだよ。そうなったらまた野球の時の楽天に追い抜かれたのと同じくやられるよ。嗚呼。
 
 で、今見ると、ホリエモン自身、TVでかなり浮かれていたし。きっかけはどうかわからないけれど、ただこうやって墓穴を掘っていくのを見ると、クーデターをやるのに必要なシンプルに絞り込んだ戦略性が見えないんですよ。ニッポン放送使って新しいウェブビジネスやるんだったら堂々としておればいい。それはそれで、初志貫徹したら世の中はある程度評価するでしょう。フジ買収に命をかけるならそれでも良い。でも見ていると買収も売り抜けも売名もどれも中途半端で、当人はあれもこれもといろいろと何面待ちみたいに待ちを多くしているつもりかも知れないけれど、着実にライブドアの金はなくなっていくし、私としては見ていると売り抜け説ですら貫徹できない優柔不断に見える。

 戦争しかけたのなら、きっちり戦略目標を絞って突っ込まないと。あれもできるこれもできる、なんてTVで言ってちゃ、相手はどんどんそれを一つ一つ潰して来るんだから、いずれ損切りでリーマンブラザーズも突然見放すよ。リーマンブラザーズにはそれぞれの価値を見極める数字指標があるだろうし。そこでホリエモンは資本主義の自由と平等なんて言うけど、そんな価値観あぐらかいてるエライ人たちの防禦力には効かないよ。

 そこで売り抜けはショボイと思うけど、当人見ているとそれでさえも逃げ道になると見ている節が少しある。売り抜けられる、誰かが骨を拾ってくれるような甘えがある。ショボさに本当に気付いていないんじゃないかと思えてきた。孫正義ソフトバンクというおじいちゃんがいたから孫(ありゃ)に小遣いやる感覚で助けてくれたけど、ホリエモンはそこから学んでいない気がしてきた。金のない孫正義に価値がないように、今のホリエモンは見える。うまくやれるだろうと当人は思っているけど、包囲は狭まっている。

 証券会社は明確な数値目標を出して、それに合わせてホリエモンを踊らせてるだけだから、悪い社内の数値指標が出れば、ドライに、まさしくからっからに即座に見捨てるよ。価値観の問題じゃない。とうの本人が言っているビジネスの原則は、例外なく本人にも適用される。そこで価値観なんて言っているのを見て、詰めの甘い人だというのは良く分かった。話題作りになったから、ホリエモンとしてはやっぱり借金芸人の道になっていくのかなあ。