川瀬浩さんのマンガ『ケッタ・ゴール』一区切り

 するというので期待していた。定期購読にしてあった書店で受け取って、読む。
 つか、プレコミックブンブンの付録がケッタ・ゴールのゲームというところがすでに気合い入っているなあ。ユキさん着替えるのも忘れて夢中になっていたよ。川瀬さん手厚く扱われているなあ。やっぱり芸歴が長いとそうなるんだろうな。
 で、マンガ。をを、センターカラーだ。それに、超人気の超が3つ重なっている。すごい。まさに決戦ですね。
 話はこれで一区切りです。川瀬さんがご自分のページでそれを告知なさっていたので、楽しみに読む。
 読み終えました。
 すばらしい。いや、職業病ですぐ先を読むクセがあるので先を読んだけど、まあ隣接業者で、メンタリティが近いと先読みができるのも当然だし、それは上手く伏線が張れていたということだろう。ちゃんとその線を回収しているので、月刊誌のマンガとして成立しているという証拠だ。きちんとオチている。
 川瀬さんと電話していて、たしか3カ月で一つの山という設計に自分で月刊誌マンガとして不安だと川瀬さん言っていたけど、これなら大丈夫ですよ。毎回小ネタでちゃんと引きつけているんだし、これだけの内容の分量だとやっぱり3カ月かかると思う。3カ月の大きな山に、各月の小山ができているのだから。
 なによりも丁寧なストーリーの作り方がすがすがしいし、安心して読める。良い意味での裏切りもあるし。つか、私自身、先を読みながら、やっぱり裏を突かれました。私的にはストレートだけど、私みたいにひねくれていない読者はきちんとひねったオチになっていると思う。
 プリンセス・プラスティックの川瀬さんバージョン(ペン入れ寸前で未成)を読んだり、これまでボツになった話を見ていると、川瀬さんはそのストーリーと描写の丁寧さが一番の持ち味と思う。
 編集さんによっては、その丁寧さをスローペースと思ってもっとスピードアップさせようとするんだろうけど、いやこの丁寧さが良いのだ。その丁寧さがちゃんと作品世界を構築するのに上手く効いている。
 つか、この種のネタで編集さん主導で詰め運転になったら空中分解してしまう。川瀬さんは確信を持ってこのペースを守って欲しい。
 人を驚かせるような閃光ではなく、人を、子供を、人間をじっくり押していくその筆致がなによりの魅力なのだ。
 描線も同じく丁寧で見ていてさわやか。それにちゃんとスピードを出すところでは出ている。それで派手派手しくしないところもいい。派手な描写は他の人のマンガでは見るけど、ちょっと食傷気味なのです。派手にするんだったら静と動のメリハリに留意しないと空中分解というか濁った構図になる。
 その点派手さがありながらコントロールされているところが、特にブンブンの読者には向いていると思う。
 最近、マンガって色があるなと思う。モノクロのマンガでも、私はマンガは疎いのだけど、でも最近読むようになって、同じモノクロの中に色があるとの思いを確信する日々。
 濁った色のマンガもあるけれど、それはそれで濁った色で描くべき題材なのだ。
 その中でケッタ・ゴールは澄んだ柔らかな黄色の感じがする。ありゃ、これレイソルカラーだな。偶然。しかし自然とカラーがモノクロページで浮かぶというのが読者の引きつけとしてのなによりもの成功ではないだろうか。それだけ世界に浸らせられるという意味で。
 とにかくいい仕事です。これからこれがいろいろなっていくわけですね。今後も楽しみです。

 ラストのコマがまさに『原風景』だよなあ。しみじみさせられる。思わず小学生の頃を思い出しちゃったよ。
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