皇なつき画集を嫁が購入
ユキさんが購入。
- 作者: 皇なつき
- 出版社/メーカー: 飛鳥新社
- 発売日: 2005/02/05
- メディア: 大型本
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確かにいいわこれ。
繊細な線もそうなんだけど、独特の柔らかさに日本画というか夢二あたりの日本の戦前の絵の文脈を継いでいると思ったら、インクではなく墨でラインを書いているらしい。なるほど。それに日本画の絵の具、水彩、コピック彩色とか使い分け。それが全て豊かな作風に調和されていて、とてもいい。ミュシャっぽい絵とか、純粋に日本画の系譜だなとか、それでいながら日本のアニメの文脈も入っている作品とか、まさに目のごちそう。宝物決定である。
あとがきで皇(すめらぎ)さんは、表現とは外に向かって何かを訴えかけるのではなく、描くことで自分の中に取り込み、自分のものにする営みであると語っていた。そうかもしれない。凄く納得する。
ここ数日の私の苦しみは、外に向かってやろうとして、外が思うように行かないことで焦っていたことがあるかもしれない。
アートとは、内側に掘り下げていくものなのだ。内側に掘り下げ、それが滲み出て外に伝わっていく。それこそが表現かも。人を押すとは、他人を押すのではなく、自分という人間を押すことかと今更思う。自分を追い込んでいくんだろうなあ。
というか、ここ数日、私自身、ロボットというかAI業界で言う『フレーム問題』が脳で頻発していました。目の前の液晶ディスプレイとか、何気ない机、スピーカーからスプーン一本に至るまで、全ての作り方を知らないといけないという強迫観念に襲われていました。なんとか睡眠薬で止めていました。
人間のフレーム問題回避なんて、実は脳の働きの中に組み込まれているんだろうなと。だから統合失調かなんかしらんけど脳病の私はロボットのそういった問題を起こすんじゃないだろうか。ともかく人間がフレーム問題を起こす感覚とは恐ろしいです。昨日ようやく止まりました。朝は倦怠、夜はフレーム問題。最悪。
で、話を元に戻すと、皇さんみたいな絵柄で『白蛇伝』はアニメだったと言うから、日本のアニメ、特にテレビアニメは後退戦じゃないかと心配になる。今度TSUTAYAに行ったらすこし話題になったアニメ借りてみよう。
この前『トムとジェリー』がTSUTAYAでやってて、見たら面白いもんなあ。容赦なく面白かった。動くし。手抜き一切無し。全てがアニメーションだった。
大塚英志のサブカル論とは別に、私はサブカルの歴史の断裂を思う。戦前、戦中、戦後とあるなかで、戦後も団塊世代とバブル世代と団塊ジュニアの間で断裂があったと思う。文脈はとぎれ、概観的な論評のできない、とぎれた伝統。おそらく間に学生紛争があって、文学と政治思想が分けられなくなった世代と、それが終わった後の宴の後の世代で大きな断裂があるのだと思う。三島由紀夫の後に文豪がいなくなったように。
しかし、皇さんは寡作ながら、そんな伝統とか断裂とかは見るものには思わせても、絵にはそんな粗々しいものはなく、ただ精密で優しい、さらにもっと昔、極端に言えば中国隋唐以来の東洋絵画の遺伝子を受け継ぎ、それと現代をしっかりと結ぶ。
そんなポップさにも透明さにも逃げず、ただ美しいものをなんの先入観もなく時空を越えて追い続けるその純粋さが絵に出ている気がする。素晴らしい。
新米田家の宝物です。