アメリカ牛肉問題

 私の中で、アメリカというものが揺れ動いている。幼い頃に一緒に食事をした米海軍人の家族や、日本という代用監獄制度のある刑事警察後進国に来て、その上後ろ暗い思想勢力がいてという国を守る(米本土前で防ぐための防波堤としても)ことに命をかけ、毎月戦車がひっくり返ったとかで何人か殉職していく米軍人のイメージがあった。
 昔航空ファンには米軍の事故の記事が載っていて、毎月のように米軍人が日本で死んでいて、痛ましかった。異国で異国のために死んでいく米兵に、単純にヤンキーと言えないシンパシーを思っていた。
 でも、その一方でアメリカってものすごくガサツで、いい加減だなと思っていた。
 そして、今回の牛肉問題で、アメリカの私の心の中での格付けは、すっかり昔のフィリピンとかインドなみに落ちた。
 だって、昔のフィリピンとかインドって、モノスゴクいい加減で、おかしいなと言うと『ノープロブレム』だったもの。韓国も結構『ケンチャナヨ』で、事実ES細胞問題でああこの国はどうしようもないなと思ったけど、アメリカも牛肉問題について『ノープロブレム』と言ってしまった。
 どの国も昔は良かったみたいになってしまい、日本国内でもソニー製品も今はソニータイマーの話ばかりで輝きはなくなった。つか、センター試験のリスニング端末が(噂だけど)。日本国内でもダメになったのは認めるしかない。

沈黙の春 (新潮文庫)

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 でも本当は『沈黙の春』を生みだした消費者問題について厳しい国のはずだったアメリカが、日本に対してはインド並みなのだ。こりゃ反感を買っても仕方がないだろう。
 日米地位協定とか、そういうものでアメリカを一緒くたに毛嫌いするのはイケナイと思う。日本刑事警察の代用監獄問題があるかぎり、地位協定は無くならない。それに、米軍が日本にいることが北朝鮮と中国と当時のソ連ににらみを利かせてきたのは明らかだし、北朝鮮が好き放題やっても日本にはアメリカほどの調査能力はないし、なんだかんだ言って米軍は強力だし、今のところは用心棒として雇って置いた方が良いというのはある。
 そしてこの牛肉問題について、バカな民主党が早まった決断と言うが、まあアメリカもなんだかんだ言いながら結構妥協してきて、検査をすると言ってきたので、そりゃ太平洋を挟んでの隣人、しかもアメリカはマッキントッシュやウインドウズではなく小麦とか大豆に牛肉の農業国なので、無碍に永久輸入禁止とも言えないし、歩み寄ってくれば、こっちもすこし信頼しようかなと言うのも文脈としてはあった。
 でも、それなのに実はこんなていたらく。やっぱりアメリカは農業国、田舎者の国で、その上やっぱり一時期のインド並みの後進国なんだなと言うことになった。結局シリコンバレーなんて言いながら、作っているのは日本台湾韓国なんだし。
 結局ディズニー映画で儲けるために著作権ビジネスに金をつぎ込んでむちゃくちゃなプロテクトをかけてきて、よその国でミッキーを卒業制作に描いたら消させるという他者に厳しく、そのくせ自分の牛肉輸出はノープロブレム。こういう無茶さにアメリカが気付かないところも合衆国だからだろうな。
 ニューヨーカーもテキサスの牛飼いもアメリカ人だから。でも、それをまとめるのが米政府だろう。結局そういうきちんと国としての責任の所在が散逸しているから、イラク戦争での目標も散逸するのだ。
 私はぶっちゃけ、イラク戦争は正しかったと思っている。フセインはあの当時、アメリカへのテロを正当化し、支援するようなことをさんざん言ってきた。それだけで罪がある。テロを支援する自由なんてのは自由ではない。
 それにフセインのいる頃よりはイラクは良くなってきている。そしてアフガンも良くなっている。朝日は一生懸命ネガティブに書くけど、選挙が実施できたり、市民があれだけテロに巻き込まれながらもそのテロリストと戦う自国の警察に集まっている。間違いなく良くなっている。それに第一、タリバンにせよビンラディンにせよ、あの連中はバーミヤンの石仏を壊し、文化遺産を破壊しまくった。その点では中国だって文化大革命の狂気と同じで、まとめて非難されればならないだろう。
 とはいえ、アメリカも著作権特許権ゴロがはびこる訴訟社会で、本来著作物と特許技術の根幹であるべき、人類の幸福に奉仕するために正当な対価を払えば広汎に利用できるという権利、自由を追いつめてしまった。
 結局、文化的多様性を一時期私も信奉していたし、それがミームとしての文化や技術の原理だと思っていたけど、結局イスラムアメリカも、多様性にはちっとも関心がないのだ。他人がやることについていちいちケチを付けない心の広さだけでも良いのに、それがなくなった。コメントをつけるという活動で、自分の勢力を広げる利己性だけになってしまった。そこで強く出られれば『自由』といい、弱い立場であれば『多様性の保護』という。結局その場その場で好き勝手を言い、上手いこと立ち回ろうとしているだけで、まあそれも利己的遺伝子論の原理ではあると思うけど、でもけっきょく私も小説の中で何度か書いているけど、この世に正義も公正もないと思うしかない。
 その上で、『ノープロブレム』な厚顔無恥な人々がのさばっていく。かといって、恥を知って消えたくなる人々も、結局恥をかかずには生きていけないし、それを拒否したってアンタ生きてるじゃん、しかも絶望を言いながら浅い悲観で先送りしているだけじゃんみたいなこともあって、結局、真剣に悩む人ってごくわずかで、あとは結構図太いんだなと思う。
 まあ、結論として言いたいのは、吉野家って、オージービーフで昔の味を再現する技術がないんだなということなんだよね。焦らしプレイも程々にした方が良いと思うのだが。私は吉野家が嫌いになった。ちなみに昨日はすき家でネギ玉牛丼を食べた。これからはすき家だね。吉野家ヘイトヘイト。

[追記]
時事通信の写真http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060121-04204472-jijp-bus_all.view-001
 を見ると、危険部位の混入じゃなくて、危険部位そのものが送られてきたというのが真相じゃん、これって。
 ここまでナメられているのか。ここは国産ステルス戦闘機JF-4ディーヴァと航空護衛艦<ほうしょう>を作るだけじゃ足りなくて、筑波大のパワードスーツを改良・装甲化した機動歩兵でも作って本気でパールハーバーやり直すしかないんじゃないかとさえ頭に来る。
 数少なくなった最も親密な同盟国に対する仕打ちかこれは。
 宣戦布告じゃないのかこれ。ヒドすぎる。