購入

 久しぶりに本を買う。雑誌ばっかりで読書とはいえなくて苦しかった。


 スティーブン・キング『神々のワード・プロセッサ』

 ちょっと読んでみて、やっぱり訳がいい。日本語になってるし、ちゃんと日本語の本として読みやすくしてある。しかしキングも相変わらずキレてるなあ。あの冴えたやり方はすばらしい。


 神庭重信『こころと身体の対話・精神免疫学の世界』

精神免疫学の世界 こころと体の対話 (文春新書)

精神免疫学の世界 こころと体の対話 (文春新書)

 ここら辺の話を今書いている『シルエット・シルバー』の後にやりたいので、まず傾向と対策で購入。
 薄々と分かっていた免疫論が整理されているんだけど、精神の部分に私としては不満を持った。
 だって笑いが健康にいいの段階から風邪からウツを併発することとかはやっても、そこからホルモンの話になって、また内分泌系ですかみたいなところで、確かにしっかりホルモンの名前とか書いてあるけど、もうちょっと深い考察がほしい。
 いやそこまでやっちゃ異端なんだろうけどな。できれば統合失

皮膚・自我

皮膚・自我

調症からウツ・アレルギーにガン・感染症まで全部書いちゃったら……あ、やっぱりだめか。
 私としては、『免疫の意味論』

免疫の意味論

免疫の意味論

 みたいなのを期待していたし、免疫には精神的な限界、どこまでが自分でどこからが他者か、という頭で分かる限界と、実際の身体としての限界(『皮膚と自我』

皮膚・自我

皮膚・自我

 みたいな)ところを統合した免疫論がほしいんだけど、まあ文春新書でそこまでやるのは深入りしすぎなのかな。
 まあ、『免疫の意味論』もずいぶん昔に読んで記憶が劣化しているのでまた読みたい。
 でもあれってたしか小倉出奔以前に買ったんだっけ。今の蔵書にあるかなあ。


 で、実は一番面白そうで、一番貶されそうなのが野矢茂樹『無限論の教室』。

無限論の教室 (講談社現代新書)

無限論の教室 (講談社現代新書)


 これが講談社現代新書なのに小説仕立て。この本、萌えキャラとかの挿絵入れても面白かったかも。ヴィトゲンシュタインかどうかという話なんだけど、せっかくキャラを出したんだから、萌え絵師を使って『萌えの無限論』にしてもよかったような。でもそれをやらないのもまた渋い選択なんだとも納得する面もあるのだが。
 先生と自分とタカムラさんだけの大学の3人だけの無限論教室で、先生が無限論をやるのだが、タカムラさん(女性)が先生に鋭い切り返しをするのがたしかにモエる。一瞬『文学部唯野教授』を思い出しちゃったよ。

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)

 ゼノンの詭弁に始まってカントール対角線論法をやって、ヴィトゲンシュタインにいって、そこでこんなのヴィトゲンシュタインじゃないと言われかねないところまで砕くんだけど、何よりもあとがきで、『出版のアテもないけど書きたくなって書いて面白かった』と著者が言っているのが楽しい。
 そうだよね、小説を描くのって楽しいよね。
 人はすべて、描きたいものを描くのが一番だと思う。描きたいからこそ努力もできるというものだし、それが本題であれば一番良く書けるだろう。まちがいなく。
 この3冊、これから精読するけど、特に『無限論の教室』を推したいなあ。平易な言葉で無限というカイブツを解体するところなんかエキサイティングだし。
 結局、得意な分野を完全に生かして小説が書ければ、誰でもその小説1つだけはスティーブン・キングと並んじゃうんだろうなあ。キングも面白いし、キング自身ホームランバッターだけど、でも無限論みたいな代打オンリーも面白い。
 そう思うと、世の中にはチャンスがつかめないだけで、面白いモノがまだまだいっぱいありそうな気がします。そういう人たちにチャンスが開かれると良いんだけどなあ。