のだめカンタービレ(2)

 『のだめ』だけど、小説の文法に変換して考えて視点人物が千秋であることに気付けば、のだめは主人公ではなく主人公を目的とする変化に導くものであることに気付く。
 この二人はのだめを千秋が引っ張るようでいながら本当に引っ張られているのは千秋なのだ。
 だから、千秋とのだめが引っ張り合わない国際編の10巻あたり、孫Ruiが出たあとの3話あたりでそのテンションがずれている感じが出ている。
 Ruiも掘り下げが足りないし、そのページを使っても千秋ものだめも進んでいない。サブキャラは大量に登場しているけど、まだそれが有機的に発展していない。
 本来物語の着想から千秋とのだめの往復運動であるべきなのに、国際編になってのだめだけが一人で苦しんでいるところがあって、そこがつらい。
 でも12巻ではようやく千秋が戻ってきた。これからものだめ千秋できっちり往復して欲しい。他のキャラはあくまでも従なんだから。だって千秋のお父さんのこともお母さんのことも掘り下げが足りないし。まだまだ描くことがたくさんある。
 その点で、ああこの構図ならまだまだ先に描けるなという発展性が感じられる。サブキャラもこれから生きてくるだろう。
 これからが楽しみ。結局これは累計1000万部という成果から、さらに未知の世界へ挑むための布石なのだろうと私は思う。この構図の建て方は、さらに発展していける感じがあって良い。
 ただ、真剣に考えると、のだめと千秋はどこに落ち着くのだろうと思う。落ち着かなくて良い、どんどん話を続けて欲しいのだけど、のだめの幼稚園の先生になる夢が中学校の先生の夢になり、それが留学してリサイタルを開いてしまう。果たしてこの二人はどこに向かうのか。ピアニストと指揮者だと、ピアノ協奏曲以外に接点がない。千秋をスーパーキャラとするところでピアニストながら指揮者志望という構図を持って来たけど、ホント、接点を失いやすい設定になってしまった。ここで作者が踏ん張ってあくまでも千秋とのだめの対話であることを見失わないことが重要な気がする。
 しかし#16の最後、あのコマはどう展開するか。手は速いけど、これからまた楽しみ。
 マンガ家さんはタイヘンだよなあ。暗記するほど読んでもわずかなテキスト量に複雑なオブジェクトの関係を描いた上で絵も描かなきゃいけないんだもの。すごいよなあ。