糖尿病の日々

 昨日、仕事先でユキさん倒れる。倒れたと電話してきたので迎えに行こうとするが、ユキさんがんばって自走して帰ってくる。無理をしないように、ちゃんと迎えに行く方法はあるので無理をしないようにと言い含める。
 結局今日は全休。しばらく休みを取ることになる。
 しかし私の方はかえって覚悟が決まったせいか、ようやく気持ちが落ち着き、仕事も平常通り。
 一時はかなり落ち込んだけど、まあ糖尿病でググれば出て来るとおり、それほどマイナーな病気ではない。予備軍を含めればものすごい数だし、治療法もずいぶん改善されていて、正直昔の感覚でいた私はインスリン注射と言うことでかなりビックリしたけど、実はインスリンの皮下注射は糖尿病の初期の段階でも行うことがあるということを知った。
 それにユキさんのやっているのを手伝うのだが、注射針の細さがすごい。例の『世界レベルの町工場の作った』蚊の刺す針みたいな細さで、ユキさん曰く、痛点を直撃すると痛いけど、ちょっと探れば蚊が刺すよりいたくないとのこと。
 血糖値はなかなか下がらないが、一度上がった血糖は簡単には下がらないなど、病院に行ってナースからいろいろ教わっているので、もう不安と言うより、どうやって立ち向かうかを具体的に考える段階。
 ユキさんの方はまだショックと糖尿病の症状もあるだろうけどふらつき・めまいなどの神経的なものがあり、なおかつウツも入ってかなり辛い感じ。
 家計を心配しているので、とりあえずユキさんはそんなこと考えなくていいと言っておく。足りなければ稼げばいい。方法はある。レギュラーの仕事に足していけば良いんだし。
 日々の治療。まず血糖は血糖計、グルコースメーターという装置で計る。
 小さな万歩計のような機械で、血糖と反応する薬剤をセットした小さな検査チップをセットし、穿刺といってぱちんとバネで皮膚に小さな穴を開ける器具で血を採り、チップに吸わせるとチップ内の薬剤が血糖と反応して導電性を変化させ、それをもとにグルコースメーターが血糖値を計算する。
 なれてきて、外出先でもちょっと場所を借りれば計れる。デジタル表示で出た数字を専用のノートに記録し、そしてインスリン注射。
 インスリンはペン形注入器というもので、注射器であるのだができるだけ万年筆っぽいデザインにしてある。針が小さなパーツになっていて、注入器の先端がゴムでできていて、針は両方向にのびている。注入器の先端の密封ゴムに刺さってインスリンを導入するようになっていて、反対側が皮下に注入する針になる。
 空打ちと言って少しインスリン液を放出して、皮下注射。今はおへその周りのおなかにやっている。はじめは注射前の酒精綿に負けた肌だが、すこしずつなれてきた。
 この皮下注射は短期型のインスリンを3食前、維持型のものを眠前に注射する。針は共通のものだが、短期型3回分を1セット、維持型用に1セット使うので1日2セット使う。
 グルコースメーターは最低でも一日4回使う。食後2時間も時々計るように言われているので、検査用チップは多めに用意する必要がある。
 独り身の患者さんの場合は寝込んで4回の皮下注射とかグルコースメーターの管理がうまくいかなくなり、結局それで教育入院ということもあるらしいのだが、私も精神的に参っていてもルーチンの仕事はしているし、程々に規則的なので、二人で協力して身体を管理している。
 食事療法だが、正月の食べ過ぎは問題にせよ、医師の診察ではそれだけでここまでなるとも考えにくく、ユキさんの家系に糖尿病からの心筋梗塞の人がいたので、それが因子となっていて作用を始めたのではないかとも。
 だいたい数日の食べ過ぎでぽーんと血糖が上がりっぱなしになるのでは怖くておちおち食事もできない。でも食事内容はずっと食事ノートを付けているが、それほど偏ってもいないと栄養士さんに見てもらっているし、また天ぷらにしても健康にいい油を使ったりしている。油は避けた方がいいというのは通説だが、しかし油分も使いようによっては効率よく栄養補給になることもあるし、まず食事療法は某あるある大辞典のようになんとかを毎日食べればいいなんてものではなく、いろいろと工夫してバランスよく栄養素をとることが大事と指導されている。
 まず血糖が高いので、原因究明前にまず血糖を下げないと問題の切り分けができない状態という。
 通院は毎週ということになるが、上手い具合に旧街道を経由すると案外早く着くので助かった。地元ではここでダメだったら運命と思おう、といういい病院なので、任せるしかない。ユキさんは患者、私は患者の家族であり、診察・診断をするのは医者だ。
 精神科との相互作用もまだ検討する段階ではないとのことだが、しかしストレスはテキメンに血糖にも影響するらしいので、程々にストレスを解消できるように工夫が必要とのこと。
 そこで私も自分が統合失調症であることを忘れていた。幻聴幻覚が酷くて参っていて、それも自分のせいと悩んでいたが、それは頓服を上手く使って心身を休めて復旧。
 まあ、復旧すると内心沸々とこういう他人の不幸にたかる下劣なる人々に怒りが沸いてくるが、まず医療費を稼がないと。