電脳コイル

 いや、とてもいいです。イメージは80年代末から90年代初めに私が考えていたLP/MCというコミュニュケーターとか、AMEGとかのホログラフィ操作系とそっくり。いや、それは私が先だったというより、こういうイメージがようやく画像化されたことへの賛辞なのだけれど。
 なんかね、一部のマニアはこういう先駆的なガジェットを書くと欧米、とくにウィリアム・ギブスンの80年代SFにすでにあったなんてひねくれるんだよね。そんな事言うならその世界のイメージを作って見ろよと。どうせ言語を言語でリレーしているだけじゃないか。記述された言語をイメージに再生してこその読書だろと。言葉を言葉でこねくりまわしたって平行移動だよ。やっぱり途中に映像というか、イメージというかが沸かない読書はつまらない。哲学書だって哲学のイメージがあるのだし、物理書だって物理のイメージがある。それが言語のまま、イメージに変換できないってコトは、要するに読んでないってコトなんじゃないかなと思う。
 電脳コイルはまあそういうことは抜きにしても面白い。定番の展開といえばそうなんだけど、でもあの世界観でそういう定番をやるのが面白いのだ。定番を馬鹿にしちゃいけない。非力な書き手は定番にもたどり着けない。凡才は世界を作れても、そこで物語を作れない。
 上手いから、世界を作って、定番にも目配りができる。
 実にこれからも楽しみに見られそうである。ものすごくシンクロするセンスがあって楽しい。