『映画・二百三高地』を借りて、すこしだけ見ただけですでに涙する。

二百三高地【DVD】

二百三高地【DVD】

 昔見てきつかったのだけど、最近自分が甘い気がするので気合いを入れるために見る。
 ちなみにTSUTAYAでえろいDVDと一緒に借りたら、店員さんに「間違えてませんか」と言われてしまった。
 
 
 とにかくきっつい。特にTV放送版の記憶しかないのだが、DVDではロシア軍側の描写も多い。攻防戦前に鉄条網を準備する休みにコサックダンスを踊ったり、将官日本兵はこの要塞を突破できないと豪語するところとか。

 で、その要塞がどういうものかというと、真ん中に入り江があってそこが旅順港になっている。
 軍港になっていて黄海海戦で日本連合艦隊から逃げた旅循環帯が待機している。
 隙を見せればまた出てきて日本の海を荒らし回るので、日本海軍は何とか出てこれないように港の入り口に廃船を沈めてフタをしようとする。
 これが旅順港閉塞作戦で、『究極超人あーる』の『杉野はいずこ』の元ネタはココにある。
 で、じゃあ海からフタをしたくても、艦艇で接近すると要塞砲でバンバカ撃たれてかなわない。
 そこで陸から攻めて艦隊を沈めようとする。


 その要塞、旅順要塞がすごいんだわ。
 まず荒野に立ち上がった城壁のような山地。それがぐるりと港を守るように囲んでいる。
 日本軍の作戦目標はその港への攻撃である。
 その前のまず第一は鉄条網。これには電気が流してあって越えようとすると感電してしまう。
 その越えようとするところの次に機関銃の火網。機関銃陣地、トーチカが飛び出している。
 当時日本はガトリング銃という艦艇に積んだ機銃は知っていたけど、このロシア旅順軍のもつ機銃はホチキス機銃。小さいし、連射も効く。
 これに突撃したら一連射でばったばったと射殺されてしまう。以降の戦争では火炎放射機で防備を固めた機銃陣地を焼き払って対抗する方法が後に生まれるが、当時はなかった。
 で、機銃陣地をなんとか突撃で奪うと、機銃陣地は無数に張り出していて、一つが奪われると周りの陣地から集中砲火でつぶせるように工夫されている。
 その機銃陣地網を抜けると、その斜面が突然反対側で崖になっている。
 その崖の下にはロクサイという木の枝を取り払って広がった枝を尖らせた阻止物があり、上から落ちてくる日本兵は串刺しにされてしまう。
 そしてそれを越えると今度は崖の反対側がビルみたいになっていて、小さな銃眼からまた多数のホチキス機銃が待ちかまえている。無事崖の下に降りてもそれは空堀で、機銃で射殺されるしかない。
 その上からは日本が当時持っていなかった手榴弾の雨。
 突撃する日本兵はこの多段防御の前に切り刻まれ、ミンチにされてしまう。
 もうデススターとかイゼルローン要塞とか某アニメのソロモンとかがおもちゃのように思えてしまうような凄絶な殺戮装置である。


 それに日本軍が何度も突撃するのである。
 ロシア兵もさすがにいくら機銃があるとはいえ、こうばたばたと殺しまくって良いのかと呵責を感じると、ロシアの上官はあれは人間ではない、というのである(後で得た知識)。
 で、凄絶なその殺戮で何万人も死ぬ。死んで死んで死ぬ。
 日本兵も遺してきた家族を思って脱走しようとする。でも皆同じだとかばい合ったり、殴り合ったり。まさに阿鼻叫喚。
 で、ロシア兵も死ぬ。はじめはすこしだが、日本軍も必死である。
 当時ロシアはウラジオストクを中心に中国も、朝鮮も、日本も手に入れ、植民地として搾り尽くすつもりだった。もしそれが成功していたら今頃日本はロシアの一つの州で、産業もなく、ソニートヨタもホンダもなく、ただエビ・カニ・マグロを捕る漁業と米と麦を作るだけで、あとは何の自主性もなくモスクワのゴキゲンを伺うだけの寒々とした土地になっていただろう。文化は破壊され、さまざまな歴史を伝える寺社も軽んぜられ、第一日本人自身、自分でものを考えられない奴隷となりはてただろう。
 当然そんなわけには行かない。日本には日本の心がある。愛すべき家族も、文化もある。それを守るためには自分の政府と意志を持ち、主張するべきことは主張せねばならない。
 当時は帝國主義の時代だった。そして、当時の帝國主義の世界に対抗できるのは唯一、帝國主義しかなかったのだ。
 それに気づかなかった韓国がどうなったか、北朝鮮がさらにどうなったかで想像が付きそうなものである。
 自分で何かを守る気概もなく、ただ謝罪と賠償を求めながら自分には何もない。自分たちで何かを成し遂げた達成感もなく、ただ悪口だけを言い続け、それでもその支配者に追いつけない。
 負けるとはこれほどにも惨めなのだ。
 日本は戦った。帝國主義であったとはいえ、第一すでに当時白人から黄色人種・黒色人種は徹底的に差別されていた。脳が劣る別の動物と思われ、ペットや道具のようにしか思われていなかった。
 それに日本は自尊心で立ち向かった。帝國主義という道具は使ったが、アジアは自分たちアジア人が守るのだと。
 当時のロシア帝国の強大さと、列強にいいようになぶられた清朝のていたらくを見れば明らかだった。
 戦うしかないのだ。


 日本はイギリスと手を組んだ。しかしイギリスは遠すぎる。それでも戦艦を買い、自分でも作った。大砲も何とか作った。
 だが、旅順攻略の初期は戊辰戦争の青銅砲まで使ったという状態で、しかも弾があっという間になくなった。当時大阪城のところに造兵廠という弾薬工場があったのだが、作っても作っても間に合わない。
 本来ならしっかり弾薬をためて、相手の要塞の修復が間に合わない早さで要塞にダメージを与え、のちに攻略すべきだった。
 しかし、弾がない。旅順のロシア艦隊は健在でいつ出てくるかわからない。それどころか世界最強に近いロシアのバルト海の艦隊、バルチック艦隊がくる。来たら日本は壊滅である。
 かといって弾薬を増産するのも間に合わない。
 そこで突撃するのである。紙止め具のホチキスというのがあるが、あれはホチキス機銃の会社が作ったものである。今はステープラーと呼んでいるが、あのホチキスをかちかちやるように弾が撃たれる。そのたびに日本兵が死ぬ。
 今のように機銃陣地に対抗する火炎放射機もない。戦車もない。上から攻撃する飛行機もない。
 ひたすら殺される。虫けら以下に殺される。
 それでも日本人は突撃した。
 そのなか、司馬史観では海軍が入れ知恵してようやくとなっているが、28センチりゅう弾砲をなんとか旅順攻略に持ってくる。
 今の陸上自衛隊の203ミリりゅう弾砲は自走式でキャタピラで移動できるが、当時はトラクターも自動車もない。ひたすら馬と人とコロで運ぶしかないのである。しかも泥濘の道である。それを運んできたのだ。
 実際は海軍もバルチック艦隊が来るというときに沿岸防備用の重砲のほとんどを旅順に持っていくのである。反対も多かっただろう。
 だが、持っていったのだ。
 そして、少ない弾薬でなんとかしようと、二百三高地という高台だけをなんとか占領してしまえば、そこから弾着を観測しながら二十八センチ砲を打ち込めば旅循環帯は撃滅でき、ほかの旅順要塞は意味を失うという結論に至るのである。
 実に凄絶である。乃木を無能という人もいるが、司馬史観の行き過ぎではないか。
 乃木にはどっちも見えていたと思う。弾薬を待てば旅順から反撃されてしまうだろう。戦場に停止はない。つねに強襲偵察を繰り出して相手の弱点を探るのだ。それこそジリ貧になるかドカ貧になるかだったのだと思う。
 それを映画『二百三高地』は描いた。これの主題歌を書いたことで、さだまさしはウヨクといわれた。でも、右翼でも左翼でもなく、映画はただあの時代の帝國主義という苛烈な暴力と、それから愛すべき者を守ろうとしても、その思いすら言葉に出来ぬまま倒れていった日露両軍の将兵の凄絶な群像なのである。そして、すぐれた戦争映画であると同時に、反戦映画なのである。

プライベート・ライアン [DVD]

プライベート・ライアン [DVD]

 ちなみにこれをウツの時に見るのはやめた方がいい。戦闘シーンはプライベートライアンのノルマンディー上陸をはるかに越える苛烈さである。
 火が点き、引き裂かれ折り重なる屍体、鉄条網に飛び散るちぎれた手足。

男たちの大和 / YAMATO [DVD]

男たちの大和 / YAMATO [DVD]

 なぜこれが『男たちのYAMATO』であんなふぬけになったのか理解しがたい。こうして戦争は風化していくのだろうか。あの男たちのYAMATOはなんで僚艦が出ないのか、僚艦を出さずに海戦を語れるという作り手の甘さを厳しく指摘したい。あれは海空戦ではない。
 ましてや8/15ごろにやるテレビの反戦ドラマなど、お花畑平和主義の日教組教師に洗脳された寝言を脚本にしたのかと言うぐらい、見ていると頭が沸騰してくる。
 風化していくからこそ、領海を潜航したまま通過するという宣戦布告と同じことをやっても弾の空費で取り逃がし(本来なら追跡権があるので公海上に出てもなおさらに撃沈してもよい、というか、撃沈しないとこっちが危ない。海で潜水艦ほど怖いものはない)ていても、未だに日中友好などと言っているから、日本はそのうち中国に併合されて一つの県になるだろう。
 日本県。むしろそっちのほうがホリエモンだの村上ファンドの村上なんかはあんな経済犯罪のやり得にならないからいいのか? 中共は司法制度よりも政治が優先するので、政治家が怒れば即座に銃殺だもんな。
 でも中共の持っている故宮博物院のものはだいたい文化大革命でやられて、ホンモノは台湾に逃げた国民党が持ち出したものであることとか、中共の軍人が差別した亡命チベット人を虫けらのように殺したのがこの二十一世紀であることをお忘れなく。
 中共と協同で技術開発? いや夢見るのは勝手だけどさ、それだったら突然未来からドラえモンが来て世直ししてくれるほうがまだ実現性があると思うのだが。
 
 
 久しぶりに見て涙しながら、思った。
 やっぱり歴史が風化している。腑抜けている。
 国を守ること、武力攻撃事態というものにどう対処するかということがぽっかりと抜けていた日本は、やっぱりおかしかったのだ。
 私は決意をあらたにした。
 
 
 ちなみに今日、運転免許を更新した。平成24年9月まで有効なゴールド免許である。
 渡された交通規則の教本には、武力攻撃事態時のことが書いてあった。
 しかし、申し訳程度であった。
 本当に日本の周りは急変している。海はもはや我々を守ってくれない。汎地球、グローバリゼーションの時代である。またこれも国難の時なのだ。
 そんなことを思った。


 このDVDは1週間レンタルなので、もっと見ようと思う。まだ前半を見ただけの話なので、後半に続く。後半は見てすでに感想を書いていますが、また後で。